米国では米国特許法103条に「発明の非容易性」(Unobviousness)として規定され、欧州 (EPO)はEPC56条に「進歩性」(Inventive step)として規定されており、日本では特許 法29条2項にEPO同様に「進歩性」として規定されている。中国、韓国を含めた「五極特 許庁」を考えた場合、韓国、中国も「進歩性」と規定されている。

字義通りで考えれば、「非容易性」は「(特許されるためには)容易でなければよい」で あり、「進歩性」は「進歩していなければ特許されない」というものである。従って、本 来的には、米国のハードルの方が日本よりも低い可能性があるが、非容易性及び進歩性の ハードルの高さに関しては、各国特許庁の審査実務上、産業政策的な見地から適宜設定が 可能であることから、一概にそうとも言えない。

かつては、三極特許庁の中で日本は進歩性のハードルが最も高いから、日本で特許にな らなくても、米国では特許の可能性がある、と言われていたこともある。しかしながら、 近年は、米国での、いわゆる「KSR判決」の影響で、米国特許庁の審査における非容易性 のハードルは日本以上に高いと思われる。その結果、日本特許庁の公開データによれば、 日本における一般的な特許率は70%と公表されているが、米国での特許率は50%前後と なっており、ちなみに欧州も50%前後である。

日本、米国、EPOでも弁理士、特許弁護士としては、拒絶通知が発せられた場合に、い かにしてこのハードルを越えるか、が大きな課題であるが、日本の場合は、「効果の顕著 性」、「引用文献から当該発明に至る示唆が無いこと、阻害要因がないこと」が主張のポ イントであるが、米国の場合にはあくまでも「構成の差異」である。従って、日本と米国 の弁理士、特許弁護士が、夫々、外国である日本及び米国で、自国で行っている進歩性に 関するロジックで特許庁に反論したとしても有効ではない。

また、日本においては、米国における「発明品の商業的成功」等のいわゆる「2次的考 慮」の主張は基本的には有効ではない。また、欧州(EPO)の場合には、PROBLEMSOLUTION APPROACHという独特の手法で進歩性判断を行う。

従って、三極特許庁の各国共に、進歩性判断の手法が異なっている点に留意する必要が ある。この点に関しては、後ほど詳細に述べるが今回は紹介にとどめる。

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