——特許権帰属、侵害をめぐる事件(二)

15.特許技術案と、発明者の元の勤務先で担当した業務又は割り当てられたタスクとの関連性の判断

【事件番号】(2022)最高法知民終2436号

裁判要旨】特許出願権、特許権の帰属に係る紛争事件において、関連特許、特許出願書類に記載の発明者が元の勤務先における当該関連特許、特許出願技術の開発を直接担当していなかったが、元の勤務先における担当業務と権限により関連特許に係る技術の情報にアクセス、管理、取得できる場合、元の勤務先に当該技術の開発を担当している他者が存在する理由で、関連特許、特許出願技術案と関連書類に記載の発明者の元の勤務先における担当業務又は割り当てられたタスクとの関連性を簡単に否定すべきではない。

16.権利の帰属をめぐる紛争事件において権利保護ための合理的支出の請求を支持しない

【事件番号】(2022)最高法知民終2436号

【裁判要旨】特許出願権と特許権の帰属をめぐる紛争は、一般に、法律に規定の合理的な権利保護ための支出の賠償が請求できる紛争に該当しないため、原告が被告に合理的な権利保護ための費用の支払うようと命じることを請求しても、人民法院は通常、これを支持しない。

17.特許権有効性が特許権の帰属をめぐる紛争事件の審理に対する影響

【事件番号】(2021)最高法知民終2312、2395号

【裁判要旨】たとえ特許出願が拒絶されたり、特許権が無効と宣告されたとしても、過失のない当事者は、特許出願権や特許権の帰属をめぐる紛争における発明創造権の帰属の認定結果に基づいて、過失がある当事者に対して別途法的救済を主張することもできる。したがって、特許出願権または特許権の帰属をめぐる紛争事件において、関連特許出願が拒絶されたり、特許権が無効と宣告された場合でも、人民法院は事件の具体的な状況に応じて審理を続行することができる。

18.PCT出願効力が消滅時の権利の帰属をめぐる紛争の取扱い

【事件番号】(2023)最高法知民終428号

【裁判要旨】中国を含むすべての PCT 加盟国で PCT 出願の効力が消滅したとしても、実際に当該特許の出願権を有すると主張する者は、その公開されたPCT 出願人を被告としてのPCT 出願権をめぐる紛争については、依然として訴えの利益を有し、人民法院がそれを審理することができる。

19.クレームを分割して特許出願権の帰属を別々判断するべきではない

【事件番号】(2021)最高法知民終825号

【裁判要旨】1 つの特許出願に基づいて特許を出願する権利は 1 つだけである。通常、クレームを分割して特許出願権の帰属を別々判断するべきではない。

20.「悪意による知識産権訴訟の提起」の構成要件

【事件番号】(2021)最高法知民終1353号

【裁判要旨】「悪意による知識産権訴訟の提起」に該当すると判断するには、以下の要素を満たす必要がある。即ち、提起された訴訟には明らかに権利根拠や事実根拠が欠けていること、起訴人はそれを知っていること、他人に損害を与えること、提起された訴訟と損害の結果との間に因果関係があること。

21.誘導による証拠収集の場合の「悪意による知識産権訴訟の提起」の判断

【事件番号】(2022)最高法知民終2586号

【裁判要旨】特許権者が他者が侵害している、または侵害しようとしていることを証明する他の証拠を持っていない状況の下、技術案を積極的に提供することにより侵害の実施を誘導し、それに基づいて侵害訴訟を提起し、他者の通常営業に妨害または影響を与えた場合、それが「悪意による知識産権訴訟の提起」に該当すると判断できる。

22.権利が消滅時の「悪意による知識産権訴訟の提起」の判断

【事件番号】(2022)最高法知民終1861号

【裁判要旨】特許権者が特許年金の滞納等により当該訴訟に係る特許権が消滅したことを明らかに知りながら、特許権侵害訴訟を提起し、他人に損害を与えた場合、「悪意による知識産権訴訟の提起」に該当すると判断できる。

23. 「移行期間」における医薬品登録申請に伴う医薬品パテントリンケージ訴訟の受理

【事件番号】(2023)最高法知民終4号

【裁判要旨】特許法の施行後、医薬品特許紛争早期解決メカニズムの実施措置の施行前に医薬品の登録申請による特許権紛争について、当事者は第76条第1項の規定に基づき訴訟を提起することができる。関連する経過措置がまだ実施されていないため、当事者が客観的に関連資料を提出できない場合でも、人民法院は法に基づき受理することができる。

24.医薬品パテントリンケージ訴訟を提起する条件

【事件番号】(2023)最高法知民終4号

【裁判要旨】特許法第 76 条第 1 項の規定により、医薬品パテントリンケージ訴訟を提起する当事者は、以下の要件を満たさなければならない。医薬品の承認審査期間中に訴訟を提起すること、訴訟を提起する主体は医薬品販売承認申請者または関連特許の特許権者、利害関係者であること、登録申請の医薬品に係る特許権をめぐる紛争により訴訟を提起すること、訴訟請求の内容は、登録申請の医薬品に係る技術案が医薬品特許の保護範囲内になるかどうかを確認することであること。また、特許権者およびその利害関係者は、合法的かつ有効な特許権に基づいて訴訟を提起すべきである。

25.医薬品パテントリンケージ訴訟における登録可能な特許種類の審査と認定

【事件番号】(2023)最高法知民終7号

【裁判要旨】医薬品パテントリンケージ訴訟において、関連特許が登録可能な特許種類であるかどうかを当事者が争う場合、人民法院はそれを審理すべきである。特許法第76条第1項の規定により当事者が提起する訴訟は、登録申請の医薬品に係る特許権をめぐる紛争に起因する訴訟でなければならなず、当事者の権利主張の根拠となる特許が医薬品特許紛争早期解決メカニズムの実施措置に定められた登録可能な特許の種類に該当しない場合、人民法院は提訴を棄却する裁決を下すべきである。

26. 結晶構造を特徴付ける化合物の特許およびその化合物を含む組成物の特許は登録可能な特許の種類に該当しない

【事件番号】(2023)最高法知民終7号

【裁判要旨】医薬品特許紛争早期解決メカニズムの実施措置に定める化学医薬品について登録できる特許の種類は、医薬有効成分の化合物の特許、有効成分を含有する医薬組成物の特許、及び上記二つのものの医薬用途の特許である。分子構造で表現された既存の化合物、結晶単位胞パラメータによって結晶構造をさらに特徴付ける化合物の特許、その化合物を含む組成物の特許、および上記二つのものの医薬用途の特許は、医薬品特許紛争早期解決メカニズムの実施措置に定められた登録可能な特許の種類には該当しない。

27.特許法第76条第1項にいう「関連特許」の判断

【事件番号】(2023)最高法知民終1233、1234、1235号

【裁判要旨】既に中国で販売されている先発医薬品に対応し、特許情報登録プラットフォームに登録されている特許は、特許法第76条第1項にいう「関連特許」に該当する。

28.後発医薬品の申請者は、特許取得済みの先発医薬品と仕様のみが異なる場合、どのように申告すべきでしょうか。

【事件番号】(2023)最高法知民終1233、1234、1235号

【裁判要旨】後発医薬品と仕様のみが異なる先発医薬品は特許情報登録プラットフォームに関連特許が既に登録されている場合、後発医薬品申請者は、原則として先発医薬品に係る登録特許に基づいて申告すべきである。

29.先発医薬品の技術案が特許請求の範囲内にならない場合の医薬品パテントリンケージ訴訟事件の取扱い

【事件番号】(2023)最高法知民終2、3号

【裁判要旨】医薬品パテントリンケージ訴訟において、先発医薬品の技術案が関連特許の特許請求の保護範囲内になるかどうかについて当事者が争う場合、人民法院はそれを審理すべきである。先発医薬品の技術案が権利者または利害関係者が主張する特許権の保護範囲外である場合、その起訴を棄却すべきである。

(特記事項: 自社営業秘密に係っているという当事者の主張によりさらなる検討と処理が必要な個別の事件の判決文書を除き、これら事件の判決文書は中国判決文書サイトhttps://wenshu.court.gov.cn/で公開されています。)

出所:最高人民法院知的財産権法廷

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