医薬品・農薬品の特許権存続期間の延長にかかる分析

医薬品・農薬品は、政府機関の許可証を取得しなければ、...
Japan Intellectual Property
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医薬品・農薬品は、政府機関の許可証を取得しなければ、市場で販売することができないが、許可証の取得には、長い時間を費やさなければならない状況となっている。そのため、台湾の特許制度では、特にこれらの特許に対し、許可証取得のために実施することがができなかった期間を補償する、特許権の存続期間の延長登録制度を導入しており、台湾専利法第53条に、「特許権を取得した医薬品、農薬品、又はその製造方法に係る発明の実施において、他の法律の規定により許可証の取得が必要であり、かつ、その許可証を特許出願の公告後に取得した場合、特許権者は、一回に限り、第一回目の許可証をもって、特許権の存続期間の延長出願をすることができる。ただし、当該許可証による特許権の存続期間を延長登録出願は一回に限る」、「その延長期間は五年に限る」と定めている。

 台湾の特許権の存続期間の延長登録制度は、既に25年以上運用されており、非常に多くの事例が蓄積されている。特許権の存続期間の延長登録出願案は、特許公報のほか、中華民国特許情報検索システムの雑項資料(その他の情報)の欄に以下の形式にて表示されている。

(1)特許権存続期間延長登録出願中(以下、特許延長出願案件)

(2)特許権存続期間延長登録査定の公告(以下、登録査定案件)

(3)特許権存続期間延長拒絶査定の公告(以下、拒絶査定案件)

 本稿では、中華民国特許情報検索システム(Taiwan Patent Search System)の雑項資料(その他の情報)の欄にて、特許延長出願案件と掲載されているもので、第一回の許可証の取得日が、2010年以降であることを検索条件とし、特許権の存続期間延長の状況及び登録・拒絶査定の情況につき、分析を行う。

 公告日が2020年2月より前で、2010年1月1日以降に、第一回の許可証を取得した特許延長案を分析対象とした本稿の統計によると、この期間の特許延長出願件数は、計176件あり、その内、医薬品の特許延長出願は165件(93.75%)であり、農薬品の特許延長出願は、僅か11件(約6.25%)であった。そして、医薬品の特許延長出願案165件において、38件が出願審査中、121件が登録査定で、6件が拒絶査定であった。一方、農薬品の特許延長出願案件においては、1件が審査中、6件が登録査定、4件が拒絶査定であった。

 その分布状況は、以下の図のとおりである。

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 農薬品の登録査定案件6件のうち、2件は5年の延長を請求する出願であり、その他4件は、2~4年の延長を請求する出願であった。5年の延長を請求する出願のうち、1件は5年間、もう一件は4年あまりの期間延長が登録査定されており、その他4件については、3件が2~3年、1件が2年未満であった。そして、拒絶査定案件の4件のうち、3件は5年の延長を請求する出願であり、その内の一件は、納付猶予期間を超えて特許料(年金)が不納付であったため、審査完了前に特許権利消滅となり、特許権の延長出願も、特許権の消滅により却下されている。

 また、上述の165件の医薬品の特許延長出願案件の状況を許可証の発行年から見てみると、出願件数は2015年以降増加傾向にあり、2019年に減少傾向が見られるが、特許権の存続期間の延長出願は、許可証の発行日から3月以内に提出する必要があり、出願後に提出書類が揃っていない場合は、最長6月内での補完が可能であるため、引き続き出願件数に若干の増加がみこまれることから、2019年の特許延長出願が減少したとは言い切れない。この他、現在審査中である案件の許可証の発行年は、その多くが2018~2019年のものであり、その他の年の案件は、ほとんど審査が完了している。

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 上述した165件の医薬品の特許延長出願案件の延長請求期間は、以下の図のとおりである。5年の延長を請求する出願は64件と最も多く、その他の請求期間の分布は、比較的平均しているといえる。

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 更に、121件の医薬品の登録査定案件につき、出願時の延長請求期間と、実際に延長登録査定を受けた期間を比較したところ、請求期間と査定期間が同じ結果となった案件は45件で、全体の37.19%を占め、そのうち、36件(全体の80%)は、最長である5年間を請求し、5年間の登録査定を受けている。また、請求期間と査定期間が異なる結果となった案件であっても、3割近くの案件において、その差は、45日以内となっている。

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 また、医薬品の拒絶査定案件(計6件)中、3件は拒絶後、他の許可証を以って再度特許延長を出願している。そのうち1件は、2020年4月に延長登録査定を受け、2件は未だ審査中である。

 上述の分析結果から、台湾の特許延長出願案件において、医薬品の特許権存続期間の延長は、農薬品に比べ、登録査定の割合が高いだけでなく、その登録査定案件のうち、請求した延長期間と実際に査定を受けた延長期間の差が45日以内の案件が、全体のあ約3分の2を占めていることがわかる。従って、医薬品に関して言うならば、台湾にて第一回の許可証を取得した後の特許延長出願は、特許権の存続期間及び関連権益の確保において、非常に有益であると言える。特許権の存続期間の延長登録制度を有効に活用すべく、適時、特許料(年費)を納付し、延長登録査定を受ける前に却下されぬよう、留意ありたい。

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