台湾著作権法の改正草案

デジタル時代に生まれた著作物の新たな利用方式に対応させるため、台湾の知的財産局は、国際条約及び先進諸国の法令を参考にした上で
Taiwan Intellectual Property
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デジタル時代に生まれた著作物の新たな利用方式に対応させるため、台湾の知的財産局は、国際条約及び先進諸国の法令を参考にした上で、2020年1月30日に著作権法の一部の改正草案を発布した。この改正草案は、2021年の4月8日に知的財産局の上級機関である行政院の審査を通過したため、今後台湾の国会の審議を受ける予定である。以下では、この改正草案の概要を説明する。

  • 「公開放送」と「公開伝送」の定義の調整

現行の著作権法で、インターネットを通じて音楽、映像等の著作物を公衆に伝達・提供する行為は、「公開伝送」となるのに対し、インターネット以外の方法(例えば無線テレビ信号)による著作物の同時放送は、「公開放送」となる。そのため、最近よく利用されているインターネットによる同時放送は、前記の現行法の定義において、「公開伝送」とされ、「公開放送」ではない。

しかし、視聴者が著作物を同時視聴する場合、著作物の提供者がインターネットで提供しているか、それともインターネット以外の技術手段で提供しているかを見分けることが困難であるほか、今となっては見分ける意味もなくなっている。この状況を受けて、知的財産局は「公開伝送」と「公開放送」の再定義を行った。

今回の改正草案における新たな定義では、インターネットによるものであれ、インターネット以外の通信手段によるものであれ、同時放送(再視聴できないもの)であれば、いずれも「公開放送」になるとしている。一方、視聴者が自ら時間・場所を選択し、インターネット又はその他の手段で視聴できるように著作物を提供・伝送する行為は、「公開伝送」となる。

  • 「再公開伝達権」の新設

著作権者に対する保護を強めるために、「再公開伝達権」という排他的権利が新設される。即ち、スクリーン又は拡声器などの設備で公開放送・公開伝送された著作物の内容を同時に公衆に伝達する行為(例えば、ショッピングモールでユーチューブ映像を再生する行為)は、再公開伝達となり、著作権者から許諾を得る必要がある。

  • 著作財産権に対する制限(公正使用)の見直し

著作権法は、著作者の権利を保護するほかに、個人の権利と公共の利益の調和を図らなければならない。この目的を達成するために、下記の変革を含む改正がなされる。

  • 教室における教育の現場の需要に応じるため、法律により設立される各級学校及びその教育を担当する者は、学校における授業のために必要とされる場合、合理的な範囲内で他人の公開発表された著作物を複製・改作・散布・公開演出・公開上映・再公開伝達することができるようになる。一方、学校がインターネットを利用した遠隔教育を行う際の需要に応じるため、在籍者以外の人又は履修登録をしていない人が視聴できないようにする「合理的な技術手段」を施す条件で、公開発表された著作物を公開放送・公開伝送・再公開伝達することができるようになる。

その他、伝統的にラジオ放送で生涯教育を提供する放送大学及び補修学校が、インターネットで遠隔教育ができるようにするため、法律により設立される各級学校、又は教育機関は、教育を目的とする必要な範囲内で、公開発表された著作物を公開放送・公開伝送・再公開伝達することができるようになる。しかし、それらの学校・機関はこれによって営利行為をしてはならない。なお、前述の「合理的な技術手段」を施して在籍者以外の人又は履修登録をしていない人が視聴できないようにした場合を除き、利用の情状を著作財産権者に通知し、合理的な利用報酬を支払わなければならない。

  • 図書館等の文献保存場所における著作物の合法的なオンライン閲覧に関する公正使用の規定が新設される。例えば、現行法では、図書館が保存した本をデジタル化して来館者にオンライン閲覧をさせる行為はもとより「公開伝送」に属し、著作権者の同意を得る必要があるが、今回の改正では、一定の条件を満たせば著作権者の同意なしに来館者のオンライン閲覧が可能になる。
  • 日常的に行われる非営利活動の場合、適切な報酬を支払ってから利用できること、並びに、台湾でよく見られるような、市民が公園でダンス、健康体操、太極拳等の心身の健康を増進する身体活動を行う際、自分が携帯する設備で音楽を再生すれば、許諾の取得又は費用の支払いをせずに利用できることに関する規定が新設される。
  • 著作物が昔のものである等の理由で、著作財産権者(又はその所在)が不明な場合がある。これらの原因で著作権の利用を許諾できなければ、文化の伝播・伝承に支障をもたらすこととなる。

このような問題に対応すべく、今回の改正草案では、強制許諾の規定が追加されている。即ち、公開された著作物の著作財産権者(又はその所在)が不明で、相当な努力を尽くしても許諾を受けることができない場合、それを利用しようとする人は、主務官庁に強制許諾の許可を申し立てることができるとしている。

また、利用者が強制許諾の許可を申し立てると同時に、保証金を納付して、強制許諾の許可が下される前の先行利用を申し立てることもできるとしている。

  • 現在のデジタル社会で、電子商取引は大幅にインターネット広告による販促に依存している。このため、インターネットによる海賊版の販促活動を先制的に封じることは、海賊版の取締りや著作権保護における必要な手段となっている。

上記の現状を受け、今回の改正草案では、インターネットにおける海賊版の広告掲載が、著作権侵害と看做されるとしている。従いまして、この改正草案が可決後、ネット上で海賊版の音楽を保存したUSBメモリーを販売すれば、2年以下の有期懲役が処されるほか、民事上の責任を負うこととなる。

  • 損害賠償に関する規定の見直し

著作権侵害訴訟においては、原告が損害を蒙ったか否かや、どのように損害賠償を計算するべきかについて、原告が立証責任を負わなければならない。

原告の立証責任を適度に軽減するため、許諾料を損害賠償額として計算する方法が今回の改正草案に導入される。改正草案が可決されれば、権利者は、許諾料に相当する金額を損害賠償金として計算する方法を選択できるようになる。

  • 重すぎる刑事責任に関する規定の見直し

現行法には6ヶ月以上の有期懲役を下限とする刑罰規定があるが、刑罰が不当に重くならないように、裁判所が個別事件の情状を酌量できるようにするため、その下限を削除する。

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