ARTICLE
30 November 2023

The New Significant Investments Review Bill To Safeguard Strategic Sectors (Japanese)

オーストラリア、中国、日本、英国、アメリカにおける、自国の戦略的事業分野を保護しようとする動きを受け、シンガポール貿易産業省...
Singapore Strategy
To print this article, all you need is to be registered or login on Mondaq.com.

戦略的事業分野の保護を目的とした「重要投資審査法案」について

1.オーストラリア、中国、日本、英国、アメリカにおける、自国の戦略的事業分野を保護しようとする動きを受け、シンガポール貿易産業省は、世界的に地政学的緊張が高まる中で自国の重要な事業体の継続性を保つことを目的として、重要投資審査法案(以下、「同法案」といいます。)を今月初旬に国会に提出しました。同法案は、戦略的事業分野の監視・管理のため政府に一定の保護措置を認めることで、シンガポール経済の回復力を高め、国家安全保障を強化することが期待されています。

2.同法案の第二回審議は2024年1月に予定されており、同法案が国会を通過した場合には、数カ月以内に発効が予定されています。

3.現状、重要な事業を含む事業体に対する規制は、電気通信、銀行、公益事業といった特定の規制部門の事業体を、各事業部門別の法令に基づいて監視・管理するという形で行われており、この事業部門別の規制には、事業体の所有権や支配権に関する保護措置も含まれます。これに対し、同法案は、既存の法令では十分にカバーされていなかった分野の事業体にも規制を及ぼすことで、既存の法令を補完することを目的としています。

4.本制度では、シンガポールの国家安全保障上重要な事業体として指定されたもの(以下、「指定事業体」といいます。)のみが規制の対象となります。また、指定を受けていない事業体であっても、シンガポールの安全保障上の利益に反する行為を行った場合は、一定の状況下でその投資取引が政府により審査されることがあります。

重要投資審査法案の主な内容

(A) 指定事業体に適用される規定

本制度のもとでは、シンガポールで設立された事業体、同国で活動を行う事業体、または同国で物品またはサービスを提供する事業体は、指定事業体となる可能性があります。これらの事業体は、以下の規制に従うことが求められます。

  1. 指定事業体並びにその買い手及び売り手は、当該事業体の所有権または支配権に関する一定の変更の際に、当局への通知や当局からの承認の取得を義務づけられます。例えば、指定事業体の支配権を購入しようとする者は、支配権の5%を取得する場合は事後に大臣に通知する必要があり、12%、25%、50%の支配権(間接的な保有を含む)を得ようとする場合または当該事業体の事業の全部もしくは一部を取得・承継する場合は、事前に大臣の承認を取得する必要があります。また、支配権の売り手は、50%または75%の支配権の保有者でなくなる場合に、大臣の承認を取得しなければなりません。さらに、指定事業体も、上記の所有権・支配権の変更があったことを認識した際には、大臣に通知することが求められます。必要な承認を得ないまま行われた取引は無効となりますが、それによって重大な影響を受ける当事者は、取引の有効性の確認を当局に求めることができます。
  2. 一定の状況下では、当局から是正の指示がなされる場合もあります。例えば、指定事業体の支配権取引について大臣の承認を得るための要件が満たされていない場合、取引当事者は、当該指定事業体の株式持分の移転や処分を命じられる可能性があります。
  3. 指定事業体は、CEO、取締役や会長など主要役員の選任についても当局の承認を得ることが求められます。承認を得ずに選任された場合や、承認の条件に違反があった場合は、役員の地位を取り消される可能性があります。また、大臣は、国家安全保障上の利益の観点から、主要役員の地位を取り消す権限を持ちます。
  4. 上記以外にも、指定事業体は、その保有する重要な機能の安全と信頼性を確立するための各種規定に従う必要があります。例えば、指定事業体は、大臣の承認なしに解散や清算をすることができません。また、国家安全保障上の問題が発生したり、必要不可欠なサービスの提供に支障が生じた場合は、指定事業体の継続性を保つため、当該事業体の事業、業務、財産の管理の移譲が命じられる可能性があります。

(B) シンガポールの国家安全保障上の利益に反する行為を行った事業体に適用される規定

同法案において、大臣は、シンガポールの国家安全保障上の利益に反する行為を行った事業体に対し、たとえその事業体が指定事業体でなかった場合でも、当該事業体の所有権や支配権取引を審査する権限を付与されています。取引当事者に当該事業体の株式持分の処分を命じるなどの、具体的な措置をとることも可能です。

(C) 再審査請求および不服申し立てに関する規定

大臣による決定に不服がある当事者は、独立の審判廷に不服申し立てをすることができます。同法案によれば、審判廷は、内閣の助言に基づいて大統領により任命された、議長(最高裁判所裁判官)を含む3名で構成されます。

シンガポールの事業に対する影響

1.同法案の導入が戦略的事業分野のビジネスに及ぼす主な影響は、事業体の株主構成や主要役員の変更に逐一当局の承認が必要となることであると予想されます。また、これらの事業体は、承認なしに解散や清算をすることを禁じる追加規定にも服する必要があります。

2.現状、具体的にどの事業分野が同法案の規制対象となるかはいまだ明らかになっていませんが、シンガポール貿易産業省が国際社会との連携の重要性を繰り返し表明していることに鑑みると、当局は事業体の規制については微妙なアプローチを継続することが予想されます。この点に関し、シンガポールと他の国々との規制の大きな違いは、同法案が自国の投資家だけでなく外国人投資家にも適用され、すべての投資家が国籍に関係なく公平な条件下に置かれることです。

The content of this article is intended to provide a general guide to the subject matter. Specialist advice should be sought about your specific circumstances.

ARTICLE
30 November 2023

The New Significant Investments Review Bill To Safeguard Strategic Sectors (Japanese)

Singapore Strategy
Contributor
See More Popular Content From

Mondaq uses cookies on this website. By using our website you agree to our use of cookies as set out in our Privacy Policy.

Learn More